実験計画法1
こんにちは先端技研の中根です。本日は実験計画法DOE(Design of Experiments)に関しての記事を書きます。実験計画法というと最近は機械学習やAIの方に興味を持たれる方もいらっしゃるでしょうが非常に単純な構造式から成り立っているので理解はしやすく、知っていて損はないと思います。
実験計画法はイギリスの統計学者R.Aフィッシャーが考案した手法で、農業分野で応用されてきた技術です。現在では農学、薬学、医学、工学など様々な分野で使用されています。それでは実験計画法で何がわかるのかを説明します。製造業の会社では実験や解析を実施していると思われますが目的は何でしょうか?例えば開発部門であるならば目標とする製品を作り上げるために実験や解析をしていると思います。しかし、実験計画法はより良い製品を作り出す手法ではなく、開発している製品や技術を統計的に分析しているものになります。よく勘違いされますが実験計画法を使うから良い製品ができるのではなく、開発製品の状態を見極めるために使用します。但し製品、技術の評価を正しく見極めなければより良い製品には至らないので、開発中に実験計画法を使用する意味はあると思います。
それでは実験計画法の手順を説明します。
1.データを取る
あたりまえだと思われるかもしれませんが、思いつきでデータを取るのではなく、ランダムにデータを取る必要があります。これはよく考えないと意外と難しいです。実験の順番などもサイコロを振って決めたり、後に説明します直交表を使用するのもランダムなデータを取るために使用します。したがって、データをとるためにどのような実験をするか念密に計画を練る必要があります。ここが実験計画法の名前の由来にもなります。
2.データを解析する
実験には誤差がつきものです。皆さんは実験誤差をどのように考えていますか?実験計画法では実験で求められたデータのばらつきと誤差によるばらつきを分析します。これを分散分析と言います。分散分析で求められる結果は実験に使用したパラメータの主効果と交互作用になりますが、その説明は次回以降にします。
3.結果を検証する
まずやらなければならないのが分散分析によって導き出した実験結果のばらつきが実験誤差に対して有意であるかを確認します。実験誤差が大きくて実験結果が正しく出ていない場合は再び実験計画を練り直す必要があります。せっかくとったデータが無駄になるなんてなんて効率が悪いと思われるかもしれませんが、正しい結果を得るためには重要なことです。実験誤差に対して、実験結果が有意であると判断したならば次にその実験結果からデータの水準を変更してさらに良い条件を求めるために実験計画を練り直す必要があるます。
実験計画法で何がわかるのかなんとなく理解ができたでしょうか?フィッシャーは実験がうまくいくようにヒントを出してくれています。フィッシャーの3原則です。
1.反復
1回の実験結果で導いたデータのばらつきは偶然によるものなにか、それとも本来もつデータのばらつきなのか判断するにはどうするでしょうか?答えは繰り返しデータをとることですね。実験のN数を増やすだけではなく、時間をおいて実験をすることによる偶然誤差の影響が見えてきます。
2.無作為化
実験結果の確からしさを検証するために実験の順番をランダムにすることです。実験の順番を決めておくと順番による誤差が生じてしまいます(系統誤差)。これを無作為化することにより偶然誤差として取り扱うことができます。
3.局所管理
例えば大きなグラウンドに被験者が100人いたとします。100人の実験を一括して実行するよりは100人を20人ずつ5グループにわけて実験をおこなうことにより、系統誤差を少なくして無作為化ができます。
いかがでしたでしょうか?本日は実験計画法で何が求まるのかをやり方を示して説明しました。次回からもう少し具体的な実験データを交えて説明していこうと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。