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品質工学パラメータ設計4

こんにちは先端技研の中根です。本日は静特性のパラメータ設計について説明しようと思います。静特性に関しては前回のパラメータ設計3で説明しましたので説明を省略します。それでは早速ですが課題に入りたいと思います。

上図は1D-CAE(OpenModelica)のモデルになります。モデルは慣性(inertia)を持った各軸とギアにスプリングとダンパを配置して、トルクを加えるモデルになります。トルクはramp信号で与えるので0から所定トルクまで与えることになります。このモデルが安定して回転する条件をパラメータ設計の静特性を使って求めて下さい。

実験計画は色々考えられると思います。上は実験計画の一例だと考えて下さい。まず評価の方針ですがinertia2のトルクの最大値Tと最大値の経過時間Δtの積T×Δtを出力値とします。このような出力値をとることによりトルクが早く安定する条件を探索することができます。制御因子はA~Hまで0.5、1、2の3水準をパラメータにとります。誤差因子はモデルの土台となっている3か所のspringDamperの減衰係数d=0.5、1の2種類(N1、N2)をとっています。これらの制御因子8つ、誤差因子2つを直交表L18に割り付けて合計36回の解析を実施します。

上表は直交表L18に割り付けた時の割り付け表になります。

次に解析結果から求めた要因効果図になります。このSN比の要因効果図からSN比の高い組み合わせ(図中〇)が最適条件の組み合わせになります。つまりSN比が高くなる組み合わせです。

しかし、この結果が正しいかどうかはSN比の再現性を確認するまでわかりません。そこで再現解析(実験)を実施します。再現解析(実験)では初期条件(通常第2水準)と最適条件のSN比を比較検証します。

    ①最適条件の推定

    現行条件と最適条件の推定SN比の差分(SN比の推定利得)を計算します。47.35db

    ②確認実験(解析)

    現行条件と最適条件の解析を実施して、誤差因子N1、N2それぞれの実験データを取得します。

    ③再現性の確認

    確認実験(解析)の結果から現行条件と最適条件のSN比を算出してSN比の差分(SN比の利得)を算出します。35.73db

    そして①のSN比の推定利得47.35dbと③のSN比の利得35.73dbを比較します。再現性が良いとは人によってさまざまですが、一致率70%以上であればOKとしています。今回の利得は47.35/35.73×100=75%なので再現性はOKとします。再現性を検証することは推定で導いた最適条件が確かに正しいことを証明していることになります。これは開発中に実験によって求めた最適条件が製品を上市した後も再現することを意味します。したがって再現性が悪かった場合、何故悪いのか評価の方法がおかしいのか見直す事がパラメータ設計を実施する上で重要になり、意味のあることだと思います。ちなみにパラメータ設計をあきらめてしまう設計者のほとんどがこの再現性になります。ここをクリアすることがパラメータ設計をする第一歩になります。

    上のグラフは現行条件と最適条件のトルクの時系列結果の比較グラフになります。現行条件の立ち上がりのオーバーシュートが最適条件では収まり、素早く安定しているのがわかると思います。本日は静特性のパラメータ設計に関して1D-CAEの事例を通して説明しました。次回はより汎用性がある方法である動特性のパラメータ設計について説明します。

    最後までお読みいただきありがとうございました。