スタッフブログ13

品質工学パラメータ設計1

こんにちは先端技研の中根です。本日は品質工学のパラメータ設計に関して書きたいと思います。品質工学のパラメータ設計で誰もが思い浮かぶのは田口玄一博士だと思います。しかし、実験計画法における第一人者であることを知る人は少ないかと思います。実験計画法では技術の状態を正確に把握できることは前回のブログで説明しました。田口先生は技術の改善を行うには実験計画法だけでは不十分だと考えて、品質工学パラメータ設計を提案しています。設計者が使いやすい手法としてパラメータ設計を提案していますが、残念ながら言葉が独特でわかりにくい印象を持たれている方も多いです。そこで、このブログでは用語を可能なかぎりわかりやすく説明して、一人でも多くの人にパラメータ設計の良さを理解してもらえたらと思います。

品質工学の話に入る前にまず上のフロー図を見て下さい。このフローは製造業の一般的な製品開発フローになります。市場でトラブルが発生したとします。そのトラブルの原因は開発起因のトラブルが多いといわれています。開発では製品仕様にしたがって開発したにもかかわらず市場でトラブルが発生するのは市場では意図しない誤差(ノイズ)が多いためと考えられています。しかしこの市場で受ける誤差も色々な誤差があり、所定の評価をしていれば大丈夫というものはないと思います。それでも開発部門の設計者は製品を上市する必要があるので、毎日忙しい思いをして製品を立ち上げる必要があります。

開発部門ではシステムを設計しているのですが市場で受ける誤差に対して強い、つまり商品の機能が誤差に対して堅牢性(ロバスト性)のあるシステムを開発しなければなりません。つまり上図に示すようにシステムに入る入力とシステムから出る出力が誤差の影響をうけにくいシステムを作ることが必要であることがおわかりになると思います。システムが目標通りに動作しているか評価するために開発では色々な評価項目を設けて、評価をしています。しかし、誤差に対してシステムが正しく機能しているかを評価するのは非常に難しいと思います。パラメータ設計ではこのシステムの機能が誤差に対して正しく機能しているかを評価することを目標としています。

システムを評価する一つのアプローチとしてエネルギー評価があります。エネルギーは「エネルギー保存則」からもわかるように増えることも減ることもしません。例えば開発するシステムをモータ動力源とした変速機だとします。入力はモータに加わる動力であり、出力は実際の仕事量です。モータ動力のほとんどが熱と音に変換して、仕事量はわずかであるはずです。何故エネルギー評価が良いかというと、エネルギー評価は加法性が成立するためです。例えばユニットAの騒音が40dB、ユニットBの騒音が45dBとすると全体の騒音は40+45=85dBにはなりません。このような評価方法はシステムの安定性の評価には向かないといえます。システムの安定化(誤差に対して強い)を評価するにはこの動力と仕事量が誤差に対して安定して機能しているかを評価するように加法性が成り立つ評価をする必要があります。

本日はパラメータ設計の必要性についてお話をしました。次回はパラメータ設計で使用するSN比と感度について説明していこうと思います。最後までお読みいただきありがとうございます。